POOR LOVE

静かな断末魔

水面に立つ-2023.10.15

19:00頃

よその家の晩ごはんのにおいを嗅ぐと温かくてうっすら寂しい気持ちになる 今日は日が完全に落ちるまで意識と身体の電源を落としていました 未だちゃんと動いてくれず、視界はおしなべてグレーの状態 このままうっかり沈んで行かないようにと出来うる限りの抵抗をし、小さな絶望感を見ないふりして嚥下 悲しい気持ちの根源を辿るのは今やるべきことじゃない

 

20:00頃

休めば休むほど自分が疲れていることに気がついてしまうから、ずっと忙しくさせて欲しい こんなに慌ただしい最近ですら退屈の呪いはチラチラ顔を出しにくるし いいんだよそんな律儀さ要らないんだよ、と追い返しては自分のことをちょっと嫌いになる

 

21:00頃

目の前にあるスーパーに買い物に行き、クリーニングを出し、帰宅して一息ついていると突然めまいの発作が グニャグニャふわふわグルグル 耳が聞こえない 焦る焦る焦る、大丈夫大丈夫大丈夫、やばいやばいやばいかも、脳内で小さい人間が何人も走り回っているような感覚 吐き気と、過呼吸と、吐き気と、涙 今日は大丈夫だと思ったのにな 痺れる指先で愛する人への祈りを送信し、埃まみれのフローリングに頬をつける 視界には飲みさしのペットボトルとお酒の瓶と脱ぎ捨てられた靴下がころがっている ああ、まだ私はこんなところにいる 真っ暗な部屋に煌々と浮かび上がるiPhoneの画面には、ウェディングドレス姿の同級生のおだやかな笑顔が映し出されている かわいいな、と掠れた声でつぶやいていた

 

3:00頃

動悸がおさまらない 息が固体になったようにうまく吸えない、苦しい 眠れない いつかこんな夜がなくなったらいいのにな 弱々しい願いをからっぽな部屋の隅に放り投げても手応えはまるでありませんでした 嘔吐 曖昧な寂しさを言葉にできないまま他人に縋る 臭くて汚い人間がここにいる 全部消えてしまえばいいのに