POOR LOVE

静かな断末魔

遠視-2023.10.13

コンビニの灰皿からオプションのフィルターが燃える化学的な甘い匂いが漏れ出していて懐かしい気持ちになる 冬になるにつれて、風に煙のような埃っぽい匂いが混ざってくる 毎年例外なく感じる季節の澱が、今年も私の体を通過していく

どれだけ痛い思いをしたいと思っていても、案外安全に泳いで行けてしまうのは私の防衛本能なのだろうか 傷は例外なく治癒されてしまう 何かを捨てることがこんなにも難しい それを失くすこと自体より、何かを失う別れ自体が、うすら寂しいだけのくせに。何ひとつ、こだわりを持って愛せたことなんてないくせに。それが在るということ、それを失うということ そういう曖昧で実体のない肌触りだけに意識を持っていかれ、左右されてしまう そのもの自体の具体性にまで目が及ばないことが本当に悲しくて寂しい 愛はここにたくさん余っているけれど、”あなた“である必要性はさほど無いのだ 善さだって一つではないから、”これ“や”この日々“である必要もない。理想に近い広い愛に近づいてはいるものの、ただこれは無理やり一般化して思考を諦めているだけではないのか?私ですら、私である必要がなくなってきてる…フワフワ宙に浮いて、自分の身体が、自分のことばが、脳が、感情が、欲が、全部バラバラになって無重力に漂ってるみたい。目を見張るような強烈な具体性を以て、私を孤独から引き剥がしてよ 大切に探り当て積み重ねた倫理的な愛を、傍若無人に奪ってよ 私がいなくならないように。今の私には、そういう類の強い光が必要なのだと思う それがたとえ愛ではなかったとしても。毒だって、ある時には有用な薬となるように